





図解を豊富に取り上げる本書は、日本のグラフィックデザインの歴史を概観する。作者は、日本におけるグラフィックデザインの変遷を、グラフィックアートにおける根源から最先端のデジタル時代まで辿る。洞察力に富んだエッセイを通して現代性、帝国主義、ジェンダー、商業主義、セクシュアリティ、美学などの主題を探求し、日本が西欧との交流を再開した際に起きた文化の変容について深い理解を提供する。19世紀末からデジタル時代以前までの日本のグラフィックデザインにおける重要人物が、500点以上のヴィンテージエフェメラのカラー写真と共に取り上げる。

作者は最も影響力のあるクリエイターの伝記を通して、10年にわたって日本のデザインについてまとめ上げる。200年に及んだ鎖国を終え、日本が西欧に開国してから20年も経たない時代からその年代記は始まる。作者は国の現代的な美学を形成してきた90人以上の人物に関する物語を収録。日本初の女性ジャーナリストとして知られる羽仁もと子は、東京都豊島区の校舎「Hall for Tomorrow」を建築家フランク・ロイド・ライト(Frank Lloyd Wright)に依頼した人物として知られる。戦時中の全国的なプロパガンダの中でも、杉浦非水や多田北烏の広告を通して現代的な女性像が立ち現れる。1964年のオリンピック大会では、亀倉雄策の「赤丸」ロゴとピクトグラムのデザインが大会に初めて採用され、国際舞台におけて日本のデザインが広まる重要な瞬間を画した。最後に、リブ運動として知られる女性解放運動の蜂起と、デジタル時代の始まりにおいてのグラフィックデザインの様子を取り上げる。
子供向け絵本、旅行ポスター、地図、商品広告、エロ雑誌の表紙などに彩られる本書は、日本のエフェメラの視覚的な宝庫として機能しながら、それらのデザインの背景にある創造的な思考を紹介する。